「退院はもう来週なのに、ケアマネジャーがまだ決まっていない」——このような状態で不安を抱えるご家族は少なくありません。回復期リハビリ病棟で働いていると、「ケアマネって誰にお願いすればいいんですか、まだ決まってないけど大丈夫ですか」と聞かれることがよくあります。医療面の説明は病院側からありますが、退院後の生活を組み立てる担当者探しは家族が自分で動かなければならない場面が多く、つい後回しになりがちです。
特に遠方に住んでいて地元の事業所の情報を持っていない方、仕事があって平日の日中に電話をかける時間が取りにくい方ほど、「何から手をつければいいのか分からないまま日にちだけが過ぎていく」という状態に陥りやすい傾向があります。
結論:まず地域包括支援センターに電話をかけてください
先に結論からお伝えすると、ケアマネジャーが決まっていない状態で退院が迫っているときは、まず「地域包括支援センター」に電話をかけてください。地域包括支援センターは、介護保険の申請前でも無料で相談できる公的な窓口で、担当地域のケアマネジャー(居宅介護支援事業所)を紹介してもらえます。「まだ何も決まっていないのですが」という状態のまま電話をかけて構いません。1点だけ注意があり、担当のセンターはご本人(介護を受ける方)がお住まいの地域で決まります(離れて暮らすご家族の場合、ご自身の街のセンターではありません)。連絡先は、ご本人がお住まいの市区町村のホームページや、病院の相談員(MSW)に確認できます。受付は平日の日中が基本です。
電話をかける前に、すべての情報を揃えておく必要はありません。ただ、「本人の病名(分かる範囲でよい)」「退院予定日の見込み」「要介護認定の状況(未申請か申請中か)」「自宅の住所や間取りのおおまかな様子」を伝えられると、話がスムーズに進みます。分からない項目は「まだ分かりません」と伝えれば大丈夫です。
ケアマネジャーとは、何をしてくれる人か
一言で言うと、ケアマネジャー(介護支援専門員)は、要介護認定の結果をもとに「ケアプラン」を作り、訪問リハビリや福祉用具のレンタルなど必要な介護保険サービスの事業所と調整してくれる人です。退院後、生活の中で困ったことがあったときに最初に相談する窓口にもなります。在宅で介護保険サービスを利用するには、このケアプランを作成してくれるケアマネジャーが基本的に必要です。
一つ整理しておきたいのは、ケアマネジャーが正式に「担当」になる(契約してケアプランを作り始める)のは、原則として要介護認定が出てから、ということです。申請中の場合は、認定を見込んだ暫定的な対応として動き始められることがあります(詳しくは別記事「認定が下りる前でも介護サービスは使える?暫定ケアプランの仕組み」で扱っています)。また、認定結果が「要支援」だった場合は、居宅のケアマネジャーではなく地域包括支援センターが中心となって担当する仕組みです。つまり認定前の今の段階でできるのは「契約」ではなく「探して、相談しておく」こと——そしてその相談先は、結果がどちらに転んでも地域包括支援センターで共通です。だからこそ、まず包括に電話することをおすすめしています。
決まっていない場合の探し方:電話相談から始めてよい
「探す」というと身構えてしまいますが、実際の手順はそれほど難しいものではありません。
1. 地域包括支援センターに電話する
先述の通り、まずはここに電話をかけるのが最初の一歩です。本人の病状や住んでいる地域、今分かっている範囲の状況を伝えると、条件に合いそうな居宅介護支援事業所をいくつか紹介してもらえます。
2. 病院のMSW(医療相談室)にも相談する
病院に医療ソーシャルワーカー(MSW)がいる場合は、退院支援の一環としてケアマネジャー探しを手伝ってもらえることがあります。呼び方は病院によって「地域医療連携室」など異なる場合があります。地域の事業所情報に詳しいことも多く、地域包括支援センターへの相談と並行して聞いてみる価値があります。
3. 紹介された事業所に連絡し、担当者と面談する
紹介を受けたら、実際に事業所へ連絡を取り、担当者と顔合わせ(面談)をします。複数の事業所を紹介してもらえた場合は、話しやすさや対応の丁寧さを比べて選んでも構いません。一つ目の事業所ですぐに決めなければならないわけではなく、「合わなそうだ」と感じたら他の候補も検討して大丈夫です。長い付き合いになる相手なので、少し立ち止まって選んでも遅くはありません。
決まらないまま退院日を迎える場合の動き方
それでも退院日までにケアマネジャーが決まらないことはあります。決まっていないからといって、退院自体ができなくなるわけではありません。ただし、ケアマネジャーが決まっていないと、訪問リハビリや福祉用具のレンタルといった在宅サービスの調整が退院日に間に合わず、サービスのない状態のまま数日〜数週間を過ごすことになりかねません。
退院後も探し続けてよいので、焦って誰でもいいからと契約を急ぐ必要はありません。退院前カンファレンスまでに決まらない場合は、その時点で分かっている状況(移動レベルや必要な医療処置など)を地域包括支援センターに伝えておくと、退院後の紹介がスムーズになります。退院前カンファレンスで確認しておきたいことは、別記事「退院カンファレンスで聞くべきこと」で扱っています。
なお、要介護認定がまだ申請中・未申請の段階でも、ケアマネジャーが決まればケアプランの相談を始められます。認定結果が出る前に使える「暫定ケアプラン」という仕組みについては、別記事「認定が下りる前でも介護サービスは使える?暫定ケアプランの仕組み」で詳しく説明しています。認定の申請自体がまだの場合は、「要介護認定はいつ・どうやって申請すればいい?入院中申請の実際」もあわせて確認してください。
まとめ
ケアマネジャーが決まっていないまま退院日が迫ってくると不安になりますが、まずは地域包括支援センターに電話をかけることから始めれば大丈夫です。決まっていない状態そのものを問題視しすぎず、「今日、電話を一本かける」ところから動き出してみてください。退院までにやることの全体像は、別記事「親が脳卒中で入院。退院が決まったら、まず何をすればいいか」でも整理しています。
この記事は、地域包括支援センターやケアマネジャーといった無料の公的窓口に相談しに行く前の「地図」として使っていただくためのものです。窓口に代わるものではなく、窓口に相談する後押しとして役立てていただければと思います。
