「お父様、来週には退院できます」——医師からそう告げられた瞬間、ほっとする気持ちと同時に、「え、来週?何を準備すればいいの?」という戸惑いが湧いてくる方は少なくありません。脳卒中はある日突然入院が始まるため、退院に向けた心の準備が追いつかないまま日程だけが決まっていく、ということがよく起こります。

遠方に住んでいる、仕事があって毎日は病院に通えない、という方であればなおさらです。「何から手をつければいいのか分からないまま、時間だけが過ぎていく」という状態は決して珍しくありません。

この記事では、退院が決まった直後にまず着手しておきたいことを、優先順位をつけて整理しました。医療的な診断や今後の見通しについては触れず、あくまで「手続き・生活準備」の視点でまとめています。

まずやること・7つ

  1. 退院予定日を確認し、そこから逆算してスケジュールを組む
  2. 要介護認定を申請する(まだの場合は最優先)
  3. 病院の医療相談室(MSW)に相談する
  4. ケアマネジャーを探す・決める
  5. 自宅の環境を確認する(段差・トイレ・浴室など)
  6. 退院前カンファレンスの日程を確認する
  7. 家族の中で「窓口になる人」を決めておく

以下、それぞれについて解説します。

1. 退院予定日を確認し、そこから逆算する

退院予定日が決まったら、そこから逆算して考える癖をつけると全体が把握しやすくなります。「退院の2週間前までに要介護認定を申請する」「1週間前までにケアマネジャーを決める」というように、期日と紐づけて整理すると、やるべきことの抜け漏れが減ります。退院までの期間は病状や病院の方針によって幅があるため、まずは病院側に退院日の見込みを確認するところから始めてください。

2. 要介護認定を申請する

在宅で介護保険サービス(訪問リハビリ、福祉用具のレンタル、通所リハビリなど)を使うには、原則として要介護認定を受けている必要があります。この認定には申請から結果が出るまで、目安として約1ヶ月、地域によってはそれ以上かかることがあります。つまり「退院してから申請しよう」と考えていると、サービスを使いたいタイミングに間に合わない可能性があります。なお、認定結果が出る前でも「暫定ケアプラン」という形でサービスを先行利用できる場合があります(取り扱いは地域や事業所により異なるため、ケアマネジャーや市区町村窓口に確認を)。だからこそ、その起点になる申請を早く済ませておくことが大切です。

回復期リハビリ病棟で働いていると、ご家族から「介護認定っていつ下りるんですか」「入院中でも申請できるんですか」と聞かれることがよくあります。入院中でも申請できる地域が多いため、退院が決まった時点、できれば入院中に申請しておくことをおすすめします。申請窓口や代行の可否はお住まいの市区町村によって異なるため、詳しくは市区町村の窓口か、後述するMSWに確認してください。

3. MSW(医療相談室)に相談する

多くの病院には、退院後の生活を調整してくれる医療ソーシャルワーカー(MSW)がいます。呼び方は病院によって「地域医療連携室」など異なる場合があります。要介護認定の申請方法や、退院までにやるべきことの整理は、まずMSWに相談するのが近道です。「何から聞いていいか分からない」状態のまま抱え込まず、早めに窓口として頼ってみてください。

4. ケアマネジャーを探す・決める

在宅で介護保険サービスを利用するには、ケアプランを作成してくれるケアマネジャー(介護支援専門員)が必要です。退院までにケアマネジャーが決まっていないと、サービスの調整が退院日にまったく間に合わない、という事態になりかねません。まだ決まっていない場合は、地域包括支援センターに相談すると、居宅介護支援事業所の探し方を案内してもらえます。

5. 自宅の環境を確認する

退院後にどんな介助や福祉用具が必要になるかは、実際の自宅の環境によって大きく変わります。玄関の段差、トイレや浴室の形状、寝室が何階にあるかなどを、可能であれば写真に撮ってケアマネジャーやリハビリスタッフに共有しておくと、退院前カンファレンスでの相談がスムーズになります。

手すりの設置や段差の解消といった住宅改修を検討している場合は、業者に着工を依頼する前に確認しておきたいことがあります。先に工事を始めてしまうと、介護保険の住宅改修費の補助が受けられなくなる場合があるためです。対象範囲や手続きの詳細はお住まいの市区町村で確認していただきたいのですが、「まず着工前に相談する」という順番だけは覚えておいてください。この点は別記事で詳しく扱います。

6. 退院前カンファレンスの日程を確認する

多くの場合、退院前には病院スタッフ・ケアマネジャー・家族が集まって、今の身体状況や自宅での生活動作、退院後に受けられるサービスについて話し合う「退院前カンファレンス」が開かれます。実施の有無や呼び方は病院によって異なります。この場でしか聞けないことも多いため、日程は早めに確認し、遠方の家族も含めて予定を調整しておきましょう。カンファレンスで具体的に何を聞くべきかは、別記事「退院カンファレンスで聞くべきこと」で詳しく整理しています。

7. 家族の中で窓口になる人を決めておく

遠方に住んでいたり、仕事があったりすると、家族の誰か一人がすべてに対応するのは現実的ではありません。ただ、病院やケアマネジャーとのやり取りの窓口が複数人に分散すると、情報が食い違ったり伝達が漏れたりしやすくなります。窓口となる人を一人決め、他の家族はその人を通じて情報を共有する形にしておくと、混乱を減らせます。

まとめ

ここに挙げた7つは、脳卒中で入院された方に比較的共通する流れです。ただし、麻痺の程度や住環境、ご家族の状況によって優先順位や具体的な進め方は変わってきます。迷ったときは一人で抱え込まず、MSWやケアマネジャー、地域包括支援センターといった無料の公的窓口に相談してください。この記事や後述のLINEでの情報提供は、そうした窓口の代わりになるものではなく、窓口に相談する前の「地図」として使っていただくためのものです。