「介護認定っていつ下りるんですか?」「入院中でも申請できるんですか?」——回復期リハビリ病棟で働いていると、ご家族からこの質問を本当によく受けます。退院の話が具体的になるにつれて、要介護認定という言葉自体は聞いたことがあっても、いつ・どこで・誰が申請すればいいのか分からないまま、時間だけが過ぎていく方は少なくありません。

退院が決まったときにまず着手したいことの全体像は、別記事「親が脳卒中で入院。退院が決まったら、まず何をすればいいか」でも整理しています。この記事では、その中でも特に問い合わせの多い「要介護認定の申請」だけを取り上げ、申請の流れを詳しく掘り下げます。

結論:申請は退院を待たない

先に結論からお伝えすると、要介護認定の申請は退院を待たず、できれば入院中に済ませておくことをおすすめします。理由は単純で、申請から認定結果が出るまでに一定の期間がかかるからです。「退院してから申請すればいい」と考えていると、在宅で介護保険サービス(訪問リハビリ、福祉用具のレンタルなど)を使いたいタイミングに、認定がまだ間に合っていない、という事態になりかねません。

目安の感覚をつかむために、退院予定日から逆算して考えると分かりやすくなります。例えば「退院の2週間前までに申請を済ませておく」という具合です。実際にどれくらい早く動くべきかは病状や退院までの残り日数によって変わりますが、「早ければ早いほど、退院後の選択肢が狭まらない」という点は共通しています。

申請の流れ:誰が・どこで・何を持って

誰が申請するか

本人が申請するのが原則ですが、入院中で本人が窓口に行けない場合は、家族が代理で申請することができます。実際、入院中の申請では家族が代理で手続きするケースがよくあります。すでにケアマネジャーが決まっている場合や、病院にMSW(医療ソーシャルワーカー)がいる場合は、申請の進め方について相談に乗ってもらえることもあります。

現場の印象では、遠方に住むご家族や、平日は仕事で市区町村の窓口に行きづらいご家族ほど、「代理で申請できるとは知らなかった」と驚かれる傾向があります。窓口に出向く時間が取りにくい場合こそ、代理申請という選択肢を早めに知っておくと安心です。

どこで申請するか

申請先は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口です。窓口の名称(「介護保険課」「高齢福祉課」など)は自治体によって異なるため、詳しくはお住まいの市区町村のホームページや電話で確認してください。地域によっては、地域包括支援センターで申請の相談や取り次ぎを受け付けている場合もあります。

何を持っていくか

一般的に必要になるのは、申請書(窓口やホームページで入手できます)、介護保険被保険者証(65歳以上の方)または医療保険証(40〜64歳の方)、本人確認書類です。なお、40〜64歳の方が申請できるのは、脳血管疾患など国が定めた特定の病気(特定疾病)に該当する場合に限られます。このほか、自治体によっては認印が必要になる場合もあります。様式や必要書類の細部は自治体によって異なるため、事前に確認してから窓口に向かうと二度手間を避けられます。

なお、申請書には「主治医」の氏名・医療機関名を記入する欄があります。この主治医に対して、市区町村から後日「主治医意見書」という書類の作成が依頼される仕組みです。入院中に申請する場合、どの医師を主治医として記入するか(入院先の担当医か、これまでのかかりつけ医か)は状況や運用によって異なるため、記入する前に病院の相談員(MSW)や申請窓口に確認しておくと安心です。

入院中に申請するのは、実は珍しくない

「入院しているのに、退院前から申請していいんですか」と驚かれることがありますが、入院中でも申請できる地域が多く、実際に入院中に申請を済ませてから退院を迎えるご家族は珍しくありません。むしろ現場の感覚としては、退院が近づいてから「まだ申請していなかった」と気づき、慌てて動き始めるご家族の方によく出会います。退院日が決まった時点、あるいは退院の話が具体的に出始めた段階で、申請だけでも先に済ませておくと、その後の選択肢が広がります。

退院前カンファレンスが予定されている場合は、その時点での申請状況(申請済みかどうか、申請日はいつか)を共有しておくと、当日の相談がスムーズになります。カンファレンスで確認しておきたいことは、別記事「退院カンファレンスで聞くべきこと」にまとめています。

申請後に起きること

申請をすると、まず「認定調査」と呼ばれる訪問調査が行われます。市区町村の職員や、委託された調査員が、本人の心身の状態や日常生活の様子を聞き取る調査です。入院中に申請した場合は、この調査が病室や病棟で行われることもあります。日程調整の連絡が来たら、できるだけ早めに対応しておくと、その後の流れが滞りません。

調査では、歩行や食事、排せつ、入浴といった日常生活の動作について、具体的な質問をされます。入院中はできることが普段(入院前)と変わっている場合もあるため、実際の生活の様子をできるだけ具体的に、ありのまま伝えることが大切です。

認定調査とあわせて、先ほど触れた主治医意見書も市区町村から医師に依頼されます。これらの情報をもとに審査が行われ、結果が通知されるまでの期間は、目安として約1ヶ月、地域によってはそれ以上かかることがあります。

「結果を待っている間は何もできないのか」というと、そうではありません。認定結果が出る前でも、「暫定ケアプラン」という形で介護保険サービスを先行して使い始められる場合があります。この仕組みや、利用する際に注意しておきたい点は、別記事「認定が下りる前でも介護サービスは使える?暫定ケアプランの仕組み」で詳しく取り上げています。

まとめ

要介護認定は、退院してから動き出すものではなく、退院が決まった時点、できれば入院中に申請しておくことをおすすめします。申請から結果が出るまでに約1ヶ月、地域によってはそれ以上かかるため、早く動いた分だけ在宅での選択肢が広がります。申請先の窓口名や持ち物、代理申請の細かな取り扱いは自治体によって差があるため、最終的にはお住まいの市区町村の窓口、または病院のMSW、ケアマネジャーに確認してください。この記事は、そうした窓口に相談しに行く前の「地図」として使っていただくためのものです。